11月19日『テレフォン人生相談』より。
相談者は62歳女性。実兄の借金で実家を失う。実母とともに大変な目に遭ったが、心を入れ替えた(と思われる)実兄を許し、親子・兄妹としての生活をやり直したいが、相談者の子供二人がそれを許さず、実兄を“ゴミ”呼ばわりする。
パーソナリティ:柴田理恵
回答者:三石由起子(作家・翻訳家)
柴田理恵:もしもし、テレフォン人生相談です。こんにちは。
相談者:こんにちは、よろしくお願いいたします。
柴田理恵:今日はどんなご相談ですか。
相談者:私の兄と私の子供たちの確執があるんですね。
柴田理恵:はいはいはい
相談者:どうしたら仲良くできるのか。ちょっと困ってるんですけど.
柴田理恵:はい。あなたは今おいくつですか。
相談者:62歳です。
柴田理恵:ご結婚なさってるんですか?
相談者:主人は15年前に他界しました。
柴田理恵:そうですか。それでお子さんはおいくつなんですか。
相談者:36と33の男の子2人です。
柴田理恵:あなたのお兄さんというのはおいくつなんですか。
相談者:私の兄は64です。
柴田理恵:お兄さんとあなたのお子さんがちょっといろいろあるっていうのはどういったことなんでしょうか。
相談者:実は18年前に兄が借金で、実家が競売にかけられて取られてしまったんですね。
柴田理恵:はいはいはい
相談者:その一部始終を、長男が高校3年生で、次男が高1の時に見てたんですよ。
柴田理恵:はいはいはい。
相談者:せき立てられるように、お引っ越しもお手伝いに行って、住むところがないので、私の家に当時主人も健在でしたので、「お袋さんかわいそうだから呼んであげな」って言っていただいて、一緒に住むことになったんですよ。
柴田理恵:つまり、あなたのお母様とお兄様も一緒にってことですか?
相談者:いえ、兄はそのまま行方知れずになったんですね。
柴田理恵:はい。お母様がだから、お家がもうなくなってしまったから。
相談者:そうです。引っ越しのお手伝いとか、母・・・おばあちゃんですよね、子供たちにしてみれば。おばあちゃんが泣いてる姿とか全部見てたんですね。
柴田理恵:はいはい。
相談者:それで、自分の借金ですよね。友達の貸したりとか多分・・・本人が言うには、本当か嘘かわかんないんですけど、保証人になったとか・・・それがもう払えなくなって競売になっちゃったんですけど。
柴田理恵:はいはい。
相談者:そしたらそんなことを親にするなんて・・・長男と次男は、私の兄のことを、ゴミって呼んでるんですよ。
柴田理恵:うん。
相談者:「そんなことするなんてゴミだ」って「人間の資格がない」とか、そんなことばっかり言うもんですから。ただ、・・・母が82の時ですね、今85なんですけど。
柴田理恵:はい、お母さんまだご健在なんですね
相談者:健在です。
柴田理恵:現在、お母様85。はいはい。
相談者:長男と会いたいってことになって、それで3年前に、大体住んでるところは別れた嫁に伝えてたみたいなんですね。その管轄の警察署の生活安全課に行きまして。
柴田理恵:うん。
相談者:探していただいたら、その日の夜に電話が来て、「悪かったな」って「迷惑かけちゃって」って言ったんですよ。その
柴田理恵:あ、警察の方が探してくださって、すぐにお兄さんに繋がって、お兄さんから電話がもうあったってことなんですか?
相談者:そうです。それから付き合いが始まって3年になるんですけど。
柴田理恵:はいはい。
相談者:母の日に「少ないけど1万円で何か好きなの買って」とか、だいぶ改心して昔とはまるっきり変わってしまって、改心した兄を見てるもんですから、その当時の兄は嫌いでしたけど。
柴田理恵:うん。
相談者:やっぱり子供たちと仲良くして欲しい一つの理由としては、お彼岸とお盆の時にお墓参り行くじゃないですか。
柴田理恵:うん。
相談者:その時に兄とバッティングしそうになった時に、次男が車乗ってたんですね。私運転してて「ゴミが来るんなら、俺帰るから、もうここで止めて」ってそういうふうに言うんですよ。だから長男ももう所帯持って独立して、次男も独立してんですけど、まだ結婚はしてないですけど、でも、お盆とかお彼岸とか、あとは年末年始は帰ってくるんですね。
柴田理恵:はいはい。
相談者:兄もバツイチで1人もんですから。
柴田理恵:うん。
相談者:やっぱり1人で過ごすのは寂しいじゃないですか。
柴田理恵:うん。
相談者:そんな大層なものはなくても、一緒にあのテーブル囲んでとは思っているんですけど、それもできないですし。
柴田理恵:つまり、お兄さんがいらっしゃったら嫌だなっていうことなんですね。
相談者:そうです。「どうしたら許してあげられるの」って言ったら、「全く同じ敷地面積で、同じ建物、建て坪の家を、おばあちゃんに買ってあげたら、俺ら許してあげられる」みたいな・・・「そんなの無理でしょう」って言ったら、「でもそういうことをしたんだから」って・・・どうやったらでも仲良くできるのかな。
柴田理恵:やっぱり、あなたが説得しても駄目ですかね。
相談者:例えば子供たちが帰ってきてる時に、兄からの電話は取らなくなったんですよ。なぜならば、機嫌が悪くなるんですよ。
柴田理恵:なるほど。
相談者:「なんでゴミと話すの」って。「もうゴミじゃないでしょ」「ゴミだよ」って言うんですよね。
柴田理恵:つまり、あなたとあなたのお母さんにとってはいろんなことがあったとしても、やっぱり自分の息子だったり、お兄さんだったりするけれども、あなたのお子さんにとっては酷いことした人っていうそういうとても悪いイメージがあるってことですよね。
相談者:そうです。
柴田理恵:それが変わってってない。
相談者:頭から離れない。
柴田理恵:なるほど。お子さんたちの気持ちもわかるような気もするし、あなたがおっしゃるように、「兄も反省したんだし」っていう兄弟とか、家族の情みたいなものもわかるような気もします。今日のご相談は、あなたのお兄さんとあなたのお子さんたちがとても仲が悪い。仲良くするにはどうしていったらいいんだろうかってことですね。
相談者:はい、そうです。
柴田理恵:はい、わかりました。回答者の先生に聞いてみましょう。今日の回答者の先生は、三石目蒼の主宰作家で翻訳家の三石由紀子先生です。先生、よろしくお願いします。
三石由起子:こんにちは。
相談者:こんにちはよろしくお願いいたします。
三石由起子:大変でしたね。
相談者:そうですね。
三石由起子:あのね、私発想変えた方がいいと思うんですよ。あなたにとって心を入れ替えたお兄さんというのは、思い出もたくさんあるでしょうし、許せる間柄だと思いますし、またあなたにとって子供たちっていうのは、自分の子供たちですからね。両方ともかなり自分にとっては親しいんですよね。どこまでやっても許せるみたいな愛情があなたにもあってね。
相談者:はい
三石由起子:あなた中心に考えると、「私の好きなこの人と私の好きなこの人が仲良くしてくれたら私達は嬉しいのに」っていう話になると思うんですが。
相談者:はい。
三石由起子:うん、これね。もうその発想駄目だと思う。あのね。
相談者:そうですか、はい。
三石由起子:会いたい人に会えないっていう苦しさよりもね、会いたくない人に会わなきゃいけないっちゅう苦しさって、何百倍もひどいんですよ。
相談者:そうなんですか。
三石由起子:そうなんですよ。子供たちが「同じ家を作ったら許してやる」っていうふうに言ったっていうのは、許さないって意味なんだからね。それは。
相談者:そうなんですね。
三石由起子:そうです、そうです。それとね、人間ってやっぱり嫌いな人に会うと、暴力的になったり、やっぱ危険を感じるんですよ。優しい気持ちでいられないんですもん。それをね、避けるっていうのは、私はまっこと正しい判断だと思ってるわけですよ。嫌な自分を見ないで済むし、自分でね、嫌な自分をみんなに見せなくて済む。
相談者:そうなんですね。
三石由起子:そうなんです。だからね、私は今回のご相談を聞いてね、アドバイスできることはですね、例えば年末年始にね、2泊3日とかね、兄とあなたとママと3人で近場の旅行するとかね、1泊2日でもいいや、温泉旅行をするようなね。
相談者:はい。
三石由起子:そういうことをして、「それでもうおしまい。あとは来ないでちょうだい」っていうのをちゃんと伝えたらいいと思う。お兄さんに。
相談者:「来ないでちょうだい」ってやっぱり言わないと駄目ですかね。
三石由起子:言った方がいいと思います。言った方がいいと思う。
相談者:「なんで?」って聞くと思うんですよね。
三石由起子:だって長男と次男が忘れられなくて、いつも不愉快な思いになってしまうからね。そういう自分を見たくないと言ってるとっていうことだと思いますよ。
相談者:多分本人傷ついちゃうと思うんですよね。
三石由起子:それは傷つくくらいの事はしているもの。それはしょうがない。それはしょうがない。
相談者:あははは
三石由起子:そうおっしゃいますけど、高校3年生と1年生の、この多感期の子供たちがどれだけ傷ついたか考えたらね、こんな64歳の大の男がですよ、こんなもん傷ついたって何したっていいですよ。
相談者:そうですか。
三石由起子:そうですそうです。だからね、どっちにもこっちにもね、優しい顔をして、どっちにもこっちにもいい人でいようとしてると、あなただけが苦しくなっちゃうのよ。33歳と36歳っていうのはね、家庭もあれば今一番忙しい時なんだから、年末年始はそうするとして、お彼岸ってさ、1週間ずつあるじゃない。春だって、秋だって。
相談者:あります。
三石由起子:そしたらですよ、何もお彼岸のお中日にみんなでね、何時何分に行かなくていいわけだから。だからねお兄さんにさ、「ちょっと会いたくないって言ってるから」っていうのは1回言えば済む話なんでね。あなたが2回行ったっていいんですよ。お兄さんとまず行くんだよ。今までは1人で行ってバッティングするのが怖かったわけでしょ、お兄さんは。だからお兄さんに「一緒に行きましょう」って言って、あなたが2度行けばいいわけ。お兄さんは2度行かないんだから。
相談者:はぁ・・・
三石由起子:それでね、何となくそういうふうに確実に接触が避けられるものだっていう安心感をね、手に入れられれば、坊ちゃん方2人ね、この36と33だって、まず安心感が「もう合わないようにしてくれてるんだ、母親が」っていうのがあればね。
相談者:はい。
三石由起子:私ね、ちょっとあなたにも腹立ててると思う。「なんで俺たちこんなに嫌いなのに」って。
相談者:そうなんですよ。
三石由起子:そう、そうでしょ?
相談者:泊まった時に2人で・・・
三石由起子:だからそういうことなんですよ。
相談者:2人で文句言われそうなんですよね。
三石由起子:私そういうことだと思う。だから母親の愛情としてね、だから「あんなに苦しんでたのが、母親が何で忘れてる」っていう腹立ちもあると思うんですよ。
相談者:あー・・・
三石由起子:だから、それはあなたが避けるようなスケジュールを組んで、「兄は私と一緒に何月何日に行くから、それ以外の時みんなで行こう」っていうふうに言ってやったら、すごく安心すると思う。母親が守ってくれてる気がするから。だからそこはねちゃんと整理してさ。
相談者:はい。
三石由起子:うん。息子たちにも「もう会わせないから大丈夫」ということを言って、「私は会いますよ、妹だから」と。
相談者:はい
三石由起子:「おばあちゃんも自分の息子だから会いますよ」と、「でもあなたたちに会わせないから大丈夫だ」っていうことをね、やっぱりけじめをつけてやると、その何年かたてば「会っていいかな」っていう気になるかもしれない。
相談者:そうですか。
三石由起子:なるかもしれない。そうでないと、今なんかもうデンジャラスじゃないですか。いつ会うかわからない。
相談者:そうですよ。本当にですよ、
三石由起子:いつね、その不愉快な目に遭わされるかわからない。しかも母親によってね。そんなの嫌ですもん。
相談者:確かに危険です。はいはい。
三石由起子:でしょ。だからね、ちょっとあなたはね、頭を切り替えてください。
相談者:わかりました。何かすっとしました。
三石由起子:よかった。ゆめゆめ幻想を持っちゃ駄目ですよ。
相談者:わかりました。はい、ありがとうございます。
三石由起子:ではでは、ありがとうございます。
柴田理恵:もしもし、すっきりなさいましたか。
相談者:なんかはい。
柴田理恵:私も、先生がおっしゃった通りだと思います。本当にあなたのお子さん、お2人ともいいお子さんですよ。
相談者:どうですかね。
柴田理恵:だって私だったら、「なんでお母さん、あんなやつをこうなんだよ!」ってお母さんに食ってかかってるもん。もう既に。
相談者:あー。
柴田理恵:でもそうじゃなくて、嫌な時は黙って出ていって、あなたに何も怒ったりしないでしょ?
相談者:しないです。
柴田理恵:「もうお母さんとこなんか2度とこねーよ」って私だったら行かなくなるかもしれないですよ。だけどちゃんと来てくれるじゃないですか。
相談者:そうですね。
柴田理恵:2人とも本当に。
相談者:母子家庭だからです。
柴田理恵:でもね、それはね。ちゃんとあなたがきちんと育てられた証拠だし、とてもいいお子さんだっていう証拠だと思うんですよ。
相談者:そうですか。ありがとうございます。
柴田理恵:そしたらやっぱりお兄さんに「うちの子たちね、やっぱり本当にショックだったんだ」ってっていうことをきちんとお話してあげれば、本当に反省してらっしゃるお兄さんだったら、「ああそうか、悪かったな」って、それでいいんじゃないですか。
相談者:わかりました。はい。
柴田理恵:本当に先生が言った通りに、息子さんたちがもっともっと年取ったら「もういいよ」ってなってくれるかもしれないしね。
相談者:そうですね。それを祈るしかないですね。
柴田理恵:そうですね。お元気で、お母様もね、長生きなさるといいですね。
相談者:そうですね。おかげさまで今元気なんで、はい。
柴田理恵:はい。じゃ、お元気で暮らしてください。
相談者:ありがとうございました。
柴田理恵:失礼します。
相談者:はい、ごめんください。