11月13日『テレフォン人生相談』より。
相談者は52歳女性。2年前に実の両親との2世帯住宅へ引っ越したのをきっかけに鬱病になってしまった。以前住んでいた場所と今の場所の便宜性のギャップに思い悩んでしまい、家事も手につかなくなってしまう。果たしてどのようにすれば、この鬱状態から抜け出せるのかの相談です。
パーソナリティ:玉置妙憂
回答者:和田秀樹(精神科医)
玉置妙憂:もしもし、テレフォン人生相談です。
相談者:お世話になります。
玉置妙憂:よろしくお願いいたします。
相談者:お願いいたします。
玉置妙憂:はい。では早速ですけれども、今日はどのようなご相談ですか。まずは簡単に教えていただいていいですか。
相談者:はい。もう2年ぐらい前に、引っ越しをしまして、引っ越してきた家というのが、父の建てた二世帯住宅で、その住宅に入ってから2ヶ月ぐらいで私がうつ病になってしまったんです。
玉置妙憂:うん
相談者:それから2年ぐらいずっと入院したり退院したりを繰り返していて、なかなか治らなくて、どうしたらいいかっていう相談なんです。
玉置妙憂:2年前にお父様の建てた二世帯住宅にお引っ越しされて、それからうつ病になってしまった。
相談者:はい。
玉置妙憂:それで今も治らなくて困ってるんですよってことなんですね。
相談者:はい、そうです。
玉置妙憂:今おいくつですか。
相談者:今52歳です。
玉置妙憂:52歳。二世帯住宅っていうことは、お父様とお母様と一緒に住んでらっしゃる、その二世帯ですよね。
相談者:そうです。
玉置妙憂:ご自身のご家族は?
相談者:夫が57歳と・・・
玉置妙憂:57歳の旦那さんがいて。
相談者:娘が23歳です。
玉置妙憂:娘さんが23歳でいて、二世帯のあなた様のご家族は3人でお住まいなわけ。
相談者:そうです。
玉置妙憂:引っ越してから鬱になっちゃったっていうことだけれども、何か思い当たる節というか、ありますの?
相談者:はい、割と便利なところに住んでいて、家から5分ぐらいで駅に着いたりとか、買い物行くスーパーなんかも、もう五、六軒行けるスーパーがあって、もう好きな食材もこだわって買うことができたりとか。
玉置妙憂:うん。
相談者:それに比べてしまうと、こちらは駅からバスで20分ぐらいかかるところで・・・
玉置妙憂:なるほど。
相談者:買い物するところも、自力で行けるところは一軒しかなくて、やっぱりお料理がすごく好きだったんですけれども、食材選びからなかなかできなくなってしまう。
玉置妙憂:うんうんうん。
相談者:お料理も思うように全然作れなくなってしまって、お掃除も好きだったんですけども、全然やる気が起きなくて、なんかほとんど寝てるばっかりで・・・
玉置妙憂:そう。ずいぶんと、以前にお住まいだったところと環境が変わっちゃったのね。
相談者:はい、そうです。
玉置妙憂:それで好きなことも、うまいことできなくなっちゃったってことなのかな。
相談者:好きな事が全然できなくなってしまって・・・
玉置妙憂:それでお医者さんにはかかったの?
相談者:かかってます。
玉置妙憂:治療っていうか、お薬も飲んだりをされてるわけですよね。
相談者:はい、そうです。
玉置妙憂:でも一向にいい感じにならない。
相談者:ならないです。
玉置妙憂:あれなのかな、2世帯になって人間関係っていうの?お父さんやお母さんとかとはうまくいってらっしゃるの?
相談者:はい。
玉置妙憂:で、ご自身のお家の中も、旦那さんと娘さんと仲良くできてる?
相談者:仲良くできてはいると思います。
玉置妙憂:じゃ、本当に困ってるのはその環境なんですね。
相談者:はい。
玉置妙憂:今まで例えば、お勤めしてた時とか学生時代とか、そういう時にも同じように落ち込んだ時ってあるんですか?
相談者:あります。
玉置妙憂:その時はやっぱり病院に行って「鬱だよ」って言われたようなことってあるんですか?
相談者:はい。
玉置妙憂:あるんだね。そしたら今回大変な思いされてる鬱っていうのは何回目ぐらい?
相談者:2回目ぐらいです。
玉置妙憂:前回の時はいい感じに治ったってことですか。
相談者:そうですね。
玉置妙憂:晴れ晴れとしたんだね。
相談者:はい。
玉置妙憂:でも今回は晴れ晴れしない。
相談者:はい。
玉置妙憂:それで今日はお電話くださったわけですね。
相談者:はい。
玉置妙憂:思い当たる節はあるけれども、そして病院にもかかってるけれども、あんまりうまいこと気分が晴れないから、どうしたらいいかなっていうご相談。それでいい?いいですか。
相談者:はい。
玉置妙憂:早速ですけれども、先生にね、お聞きしてみましょう。
相談者:はい。
玉置妙憂:今日お答えいただきますのは、精神科医の和田秀樹さんです。それでは先生、よろしくお願いいたします。
和田秀樹:どうも、和田と申します。
相談者:お世話になります。
和田秀樹:はい。環境が変わって、うまくいかなくなったっていうことなんだけども、それは当たっていると思うし、1回目悪くなった時ってどんな感じだったんですか?
相談者:1回目悪くなった時も、引っ越しした直後だったんです。
和田秀樹:引っ越しの後だったんだ。
相談者:はい。
和田秀樹:その時はなんで良くなったのかしら。
相談者:その時はたまたまお友達がお仕事されていて、そのお手伝いみたいな仕事をさせてくれて、それで良くなったんです。
和田秀樹:なるほど、そういうきっかけってすごい大事ですよね。
相談者:はい。
和田秀樹:うつ病というものの中にはね、薬でスカッと良くなるような、セロトニンっていう神経伝達物質があるんだけども、それが足りなくてなるようなうつ病っていう場合はね、お薬がよく効くので、それで割と元気になるんだけども。
相談者:はい。
和田秀樹:心理的なストレスとかさ、嫌なことがあった時になる鬱っていうのは、まず一つは、そのストレスになってることをなくすだとか、あるいはそれで気分転換ができるようなことがあるとかね。
相談者:はい。
和田秀樹:今は難しいかもしれないけども、本当だったら元の場所の近くに引っ越すだとか、あるいはさっきのお友達が仕事を手伝わせてくれたみたいに、環境が変わって鬱になったんだから、また環境を変えて治すっていう方法が一つあるわけね。
相談者:はい。
和田秀樹:もう一つは、環境が合わないと思っていることに対して、気持ちを切り替える。
相談者:はい。
和田秀樹:だから、この環境が自分には悪いように思うかもしれないけど、例えばですよ。前住んでたとこはすごく便利なとこだし、近所にいっぱい買い物ができるとこがあったわけだけども、今のところは不便かもしれないけれども例えば緑が多いとかさ。
相談者:はい。
和田秀樹:そういうふうに良い点を見れるようにするとかね。
相談者:はい。
和田秀樹:っていうことになると思うんだけども、ちょっとだから、そこで気になったのが、やっぱりほら、今ずっとお医者さんに通ってるわけだけども。
相談者:はい。
和田秀樹:お医者さんとこういう心の病の場合相性って割と大事で、その先生とちょっと話してると気持ちが楽になるとかね。
相談者:はい。
和田秀樹:「そうかそういう考え方もあるのか」って、気づきを与えられるだとかさ、そういうのがいいお医者さんってか、あなたにとって良いお医者さんなわけね。
相談者:はい。
和田秀樹:ところが、残念ながらあんまり相性が良くないとかさ、つまり会ってても気が重いとか、あるいは薬のことしか気にしていないとかっていうような話だった場合は、まず一番最初に変えられるとしたらお医者さんだから、やっぱり別のお医者さんに行けばさ、もう少しあなたの気持ちがわかってくれるだとか。
相談者:はい。
和田秀樹:あるいは、「いやこういうことをしたらいいんじゃないの」ってアドバイスをくれるだとかさ。
相談者:はい。
和田秀樹:今のお医者さん自身はあなたとしては、合ってる気がする?それともちょっと違うかなっていう・・・
相談者:ちょっと違うかなっていう感じ・・・
和田秀樹:ですよね。ちょっと違うかなと思うから、おそらくこちらに電話かけてこられたんだと思うのね。
相談者:はい。
和田秀樹:だからそれを考えたら、やっぱり一番手っ取り早いのは、別の医者を試しにかかってみて、話を聞いてもらったら少し楽になったとか、「この先生といると気分がいいや」とか、そういう人を探されるっていうのが一番手っ取り早い方法かもしれないですね。
相談者:一度試みてみたんですけれど、入院歴もあるからっていうのを理由で断られてしまったんです。
和田秀樹:なるほどね。だから、入院歴があるっていうことは、確かにおっしゃる通りで、我々、精神科医の立場から見るとちょっと重い人なのかなとかさ、我々が診きれるかどうかわからないみたいなことはあるかもしれないですよね。でもそれでも今のお医者さんとちょっと合わないみたいだからって言って、また別なところに行けば、うまくすれば受けてくれると思うんですよ。
相談者:そうですか。
和田秀樹:うん。やっぱり長い人生のことだからさ。
相談者:はい。
和田秀樹:試してみて相性のいいお医者さんが例えば5軒回ってみたら5軒目で当たったとかさ、それだけでも、残りの展望がだいぶ違うと思うし。
相談者:はい。
和田秀樹:それで話を聞く限りね、あなたの場合、引っ越しをすると悪くなると。
相談者:はい。
和田秀樹:前の引っ越しの時は、なんか気分転換になる仕事をもらったら良くなったっておっしゃってるし、それで聞いてる限りはお父さんお母さん、夫、娘って協力的だし、うまくいっているわけだから。
相談者:はい。
和田秀樹:だから多分、ちょっとしたきっかけで良くなる可能性は結構あると僕は思ってるのね。
相談者:そうですか。
和田秀樹:これがね、本当に周りの環境とか、もう親との関係も悪い、夫との関係も悪い。その上、前にうつ病になった時も全然よくならなかったとかさ、そういう人だった場合は、ちょっと「これちょっと聞いてても見通し暗いかな」って、僕らなんか、仕事柄感じちゃうわけですよ。
相談者:はい。
和田秀樹:うん。それと比べると、あなたの場合、前に良くなったことがあるっていう経験はね、これはね、すごく良い兆候ですよ。
相談者:あーなるほど。
和田秀樹:現実にはね。あとはいくつも選択肢はあると思っていて、まだお父さんお母さんは、まぁまぁ元気でいらっしゃるわけですよね。
相談者:はい。
和田秀樹:だから、「ちょっと心の準備ができるまで、1年とか2年、元の場所に近いところに私が鬱病が良くなるまで戻りたいの」みたいな話をするという手もあると思うんですよ。
相談者:もう何度も戻りたいっていう話をしていて、「アパートに一人暮らししたらどうか」って父には言われて。
和田秀樹:うん。
相談者:私も一人暮らしはしたくなくて、夫に「一緒に戻って欲しい」と頼んでいて、物件とか探して見てたんですけど、夫は「どうしてもここから家を離れたくない」って言って・・・
和田秀樹:ご主人が?
相談者:はい。
和田秀樹:そうなんだ。だけど、あなたのご両親の家でしょ。夫のご両親の嫌なの?
相談者:いえ、私の両親。
和田秀樹:なるほど。難しい話だけど、元の場所に戻るっていう話にするとね。
相談者:はい。
和田秀樹:これはご両親だって年取ってくるから不安だろうし、「そうじゃなくて、病気が良くなるまでの間、ちょっと元のような環境に戻りたいんだ」と、転地とかって言うんだけど、場所を変えることで良くなることもあるわけだからね。
相談者:はい。
和田秀樹:だから、あなたの今の家か、別の環境かって二者択一じゃなくて。
相談者:はい。
和田秀樹:「一旦ちょっと病気がよくなるまで、こういうのって駄目かしら」みたいな考え方の方がいいと思うんですよ。お父さんお母さんにしてみても、せっかく2世帯を建てたのにね。
相談者:はい。
和田秀樹:子供が離れていくっていうのは、だんだん年取ってくると不安になっちゃうから、ずっとっていうことじゃなくて、少し病気が良くなるまでっていう考え方の方がいいような気がしますよね。
相談者:わかりました。
和田秀樹:うん。やっぱりあなたの場合、普通のうつ病の治療はもう受けているわけだから、試さなければいけないことっていくつかあって。
相談者:はい。
和田秀樹:医者を変えること、環境を変えること。
相談者:はい。
和田秀樹:とにかく前向きに試せることを試してみましょうよ。
相談者:わかりました。
和田秀樹:はい。
相談者:ありがとうございました。
玉置妙憂:はい、いかがですか。具体的にやれそうなお話でしたね。
相談者:そうですね。
玉置妙憂:医者を変えてみるとか、環境を変えてみるとかね。
相談者:はい。
玉置妙憂:うん、できそうなところからぜひトライしてみてください。
相談者:はい、わかりました。
玉置妙憂:はい。ではどうぞ失礼します。
相談者:失礼します。