11月11日『テレフォン人生相談』より。
相談者は74歳女性。同い年の夫の過去の浮気疑惑が忘れられずギクシャクした夫婦生活を送っている。
夫は「離婚するつもりはない」と言うが、「離婚するかどうかは私が決める!」と夫の存在そのものを否定する気持ちも見え隠れ。
相談者のこの性格が自分の首を締めているようにも感じるのだが・・・夫と、どのように向き合っていけばいいのかを森田豊医師がアドバイス。相談者のこの性格がどのように形成されてしまったのかを加藤諦三さんが解き明かす。
パーソナリティ:加藤諦三
回答者:森田豊(医師・医療ジャーナリスト)
加藤諦三:もしもし、テレフォン人生相談です。
相談者:すいません、よろしくお願いいたします。
加藤諦三:最初に年齢を教えてください。
相談者:74歳です。
加藤諦三:結婚してます?
相談者:はい。
加藤諦三:ご主人何歳ですか?
相談者:74歳です。
加藤諦三:同い年ですね。はい、分かりました。で、どんな事でしょうか?
相談者:30年ぐらい前に、夫が毎晩、仕事帰りが遅かったんです。
加藤諦三:あー、そうですか。何時くらいの話ですか?
相談者:10時、11時・・・
加藤諦三:10時、11時。遅いですね。
相談者:それが毎日のような感じだったんです。それで無断外泊もあって、朝まで待っていたこともあるし・・・
加藤諦三:うん。
相談者:それを聞いてもだんまりで無視なんですね。
加藤諦三:ええ。
相談者:その頃だから凄く辛いをしてて、もしかしたら浮気されてるのかなぁなんて思って、だけど私の両親とその頃住んでたんですね。
加藤諦三:はい。
相談者:それで、父親がワンマンで、主人は全然性格が違うから、帰って来たくなかったっていうのも理解はできるんですね。
加藤諦三:うん。
相談者:ただ、私とすれば男がそうやって決めた事を、毎晩遅くって、本当に探偵お願いしようかとか、泣いて待ってるような状態だったんで、自分だけ逃げるは無いっていう気持ちが凄くあったんです。
加藤諦三:うん。
相談者:それでも尽くしてきたんですね。今までずっと。
加藤諦三:うん。
相談者:で、もしかして浮気されてるかなっていう気持ちがずっとあって、だけど3年前に退職した時に、写真が女の子の片手回しているとか・・・スキンが出てきたり・・・あぁ、やっぱり浮気されてたんだっていう思いがわーっと来ちゃったんですね。
加藤諦三:うん。
相談者:それを話しても、「俺は絶対浮気していない」と、で、「そういうのを持ってたのは、先輩の人がそういうのを持ってたほうがいいよって言って、使った事はないし、そういうので持ってたんだ」って言う事を言い切るんですよね。
加藤諦三:うん。
相談者:でも私に「寄り添ってなかった事、無視してた事が悪かった」って言うんです。
加藤諦三:うん。
相談者:で、今はなんかやってても、すぐ側に来て「何かやることない?」とか、やってくれるんですけど、私の気持ちは「今じゃない!」っていう気持ちが凄くあるんですよ。何であの時にひと声ね、「どうしたの?」って言ってもらえなかったのか、それが一番今何か・・・パニックになっちゃうんですね。それを思うと。
加藤諦三:ええ。
相談者:で、「泣いてたのも知ってたの?」って言うと、「知ってた」と、「だけどおじいちゃんに何か言われた泣いてたのかと思ってた」って言うんです。でも私は自分の父親だし、もうその生い立ちもずっとそういう風にして来たから、おじいちゃんに何か言われて泣くなんて絶対にないんですよ。
加藤諦三:うん。
相談者:だから主人だって多分、泣いてたのはそれだっていう風には思ってないと思うんですよ。
加藤諦三:うん。
相談者:たとえ思ってたって泣いてたら、何でひと声「どうしたんだ?」って言えないのかなって・・・そこまできちゃんですよね。
加藤諦三:うん。
相談者:何十年も前の事だからっては思うんですけど、今どうしたらいいか分からないんです。
加藤諦三:という事は、今日のあなたの相談っていうのは、ご主人との関係で、何十年前だけども、その時の心の傷がずっと消えないっていう事ですよね。
相談者:そうです。
加藤諦三:それで、その気持をとうしたらいいかっていうのが今日の相談ですか?
相談者:はい。
加藤諦三:分かりました。今日は医師で医療ジャーナリストの森田豊先生がいらしてますので、伺ってみたいと思います。
森田豊:もしもし、森田豊です。
相談者:はい、すいません。よろしくお願いいたします。
森田豊:よろしくお願いいたします。
相談者:はい。
森田豊:浮気をされるって事は、人間にとってすごいストレスだと思いますけど、30年くらい前の浮気の疑い・・・これ以外、他に無かったんですか?
相談者:他には私の友達に誘いの電話をしたとか、社宅にいた頃に社宅の人から、「気をつけたほうがいいわよ」って言われた事もありましたし、あとそういうアレはありました。
森田豊:今、旦那さん74歳ですよね?74歳でもしかしたら他の女性と肉体関係は・・・
相談者:それはないです。
森田豊:それはないですか?
相談者:あったのは、50代までは前の会社にいたんです。その後、20年違う会社に入って、そういうのは一切無かったです。
森田豊:となるとこの20年間は、基本的には女性との浮気というものを疑うような事は無いと考えられますよね。
相談者:はい。そうですね。
森田豊:あなたの今回の悩みは、「辛い思いが忘れられない」という事なんですけど、旦那さんに30年前の事を聞けば聞くほど、更に忘れられなくなっちゃうんじゃないかなと思うんです。
相談者:あ、そうなんですか。
森田豊:もしも旦那さんがあなたに「いやぁ、あの時は浮気しちゃってね」と言った場合は、あなたはどんな気持ちになります?
相談者:受け入れられます!
森田豊:あ、それ言ってくれればいいんですか?
相談者:はい。正直に「こうだった」っていう事を言ってくれれば、後は私が・・・向こうはこういう話になった時に、「俺は離婚はしない」って言ってるんですけども、昨日もそれを「離婚しないっていうのは、あんたが言う事じゃないよ」って、「離婚しないっていうのは私が決める事だから。だからこういう事があったっていうのを正直に話した上で、私はそれでもまだ少し“好き”があるから、もうちょっとやっていこうねって話になる」、そういう事も話しました。だからきちっとしたアレがあれば、私は多分許せると思います。
森田豊:難しいかもしれませんけど、30年前の事忘れられないっていう気持ちもよく分かりますけれど、ここちょっとグレーにして、旦那さんに聞かないようにして、一、二ヶ月過ごしてみたらどうですかね。
相談者:はい。
森田豊:人間の心に“ストレス障害”っていう事が起こるんですけども、その災害とか事故とか、暴力とかに合って、命の危険が起こった時にですね、色んな事が、その時の事がフラッシュバックして眠れなくなったり、苦しんだりするんですね。
相談者:はい。
森田豊:で、ひとつ人間が行う事は、その時の事を思い出させる事をしないっていう事がひとつの対策なんですね。
相談者:はい。
森田豊:で、今回のあなたの場合は命に関わるような事や災害ではないんですけれど、大変辛い事だったんですね。
相談者:はい。
森田豊:ですからちょっと数ヶ月だけども、その話題を避けて、聞かないという事にする事で、辛かった事から回避できるんじゃないかと思うんですけど。
相談者:そういう事もあるんですね。
森田豊:毎日、この事を考えてません?
相談者:考えてます。
森田豊:ですよね。
相談者:だからこれを思い出すと、もう死にたくなっちゃって、もう何回も、夜、夜中じゅう歩き回ったりしてたんですけども、一昨年は、もう思い出す度にこんななっちゃうし、相手に罵声を浴びせられるし、もうこれ以上私は思い出したくないと思って、指輪も置いて「長い間お世話になりました」って言って家を出たんです。
森田豊:そんなに辛かったんですか。
相談者:はい。
森田豊:私達はね、あなたと旦那さんになんとか長くやってもらいたいですよ。なぜならね、もし浮気だって事がはっきり分かったとしてもね、それでもあなたはこれから婚姻関係を続けていくっていう話じゃないですか。
相談者:はい。
森田豊:基本的にあなたの凄く潔癖主義というか、白黒付けなくちゃいけないっていう、それが病んでるひとつの原因じゃないかと思うんですよ。もちろん旦那さんがそういう機会を作った事は悪かったですよ。
相談者:はい。
森田豊:でも、どうかそこを目を瞑りさえすればね、二人ここから寿命を全うするまで、なとか仲良く出来るような環境なんじゃないかなと思うんですね。
相談者:はい。
森田豊:夫婦関係っていうのは、時には積極的に追及し、白黒つけなちゃいけないのかもしれませんけど、時には目を瞑ってね、何か忘れて、いい加減に考えるっていう風にしないと、幸せに生きられないんじゃないかと私は思うんですけど、どうでしょう?今まで、今回の事以外でも、あなた何でもかんでも白黒つけて・・・
相談者:そういう性格です。
森田豊:それで辛い思いしませんでした?旦那さん以外の事でも。
相談者:あります。
森田豊:じゃぁ、ここで変えましょうよ!まだまだこれから何十年も生きてくわけですから、もう少しいい加減にとは言いませんけども、“良い加減”に生きたらどうでしょうか。
相談者:そうですか。
森田豊:参考にしてください。
相談者:はい。
森田豊:加藤先生にお戻しします。
加藤諦三:ちょっとあなたに聞きたいんだけども、この主人があなたに「何を言っても俺は知らん」と態度を取ってるわけですよね。
相談者:はい。
加藤諦三:それであなたは、ご飯を作って待ってるわけですよね。
相談者:はい。
加藤諦三:ここで「あなたの食事なんか作らないよ」と、そういう態度にどうして出ないんですか?
相談者:その時は私の両親と一緒に住んでて、おじいちゃんが凄くワガママだし、年中上からガーーって言われるもんで、小さい頃からずーっと我慢してたんですよね。
加藤諦三:うんうん。だからあなたね、父親に対しても満足してないんですよ。
相談者:はい。
加藤諦三:父親との関係で満たされてなかったものを、夫で満たそうとしたと。
相談者:あーー、そういう事なんですね。
加藤諦三:ところが、夫もまた満たしてくれるような人じゃなかったと。
相談者:あー、はい。
加藤諦三:あなた、父親と夫とどっちが嫌い?
相談者:父親です。
加藤諦三:父親の方だよね。
相談者:はい。
加藤諦三:あなた、父親を嫌っちゃいけないと思ったんだ。
相談者:はい。
加藤諦三:だけど本当は嫌いだったんですよ。
相談者:はい。
加藤諦三:夫を嫌いなんですよ。本当は。
相談者:あー、そうなんですか。
加藤諦三:あなたが本当に求めているのは、周りの人からの積極的な感心なんですよ。
相談者:あー、そうなんですか。
加藤諦三:だからあなた、みんなに憎しみがあるの。
相談者:あー、そうなんですね。
加藤諦三:解決つくための唯一の方法・・・自分に正直になりなさい。
相談者:正直に・・・分かりました。はい。
加藤諦三:誰よりも父親を憎んでいる。
相談者:はい。それはもう事実です。
加藤諦三:それで、父親の代わりを求めた夫が、その変わりの役を果たさないから、今は夫へも憎しみを持ってるんです。
相談者:そういう事なんですね。
加藤諦三:そうです!本当は夫の横っ面をひっぱたけば気が済むんですよ。
相談者:はい・・・
加藤諦三:違う?あなたが夫が帰りが遅くなってもご飯を食べないで、夫に尽くしたのは、憎しみの変装した姿があなたが夫に尽くした事なんです。
相談者:はい、そうだと思います・・・
加藤諦三:そこも認めれば救われますよ。
相談者:そうですか・・・
加藤諦三:今、ちょっと楽になったでしょ?
相談者:はい・・・なりました(涙声)
加藤諦三:これから電話切ったら、バケツ一杯涙が出る程、泣いてください。
相談者:はい、わかりました・・・
加藤諦三:本当の気持ち分かった?
相談者:はい・・・憎しみからこういう事になってるっていうのが分かりました・・・
加藤諦三:そうです。
相談者:だからもっと素直に・・・そういう風に問いたださないっていう事をします・・・
加藤諦三:うん。夫に対して憎しみあるんだから、夫にハッキリ言いなさいよ。「私は、世界で最も憎しみを持ってるのはあなたです」と。
相談者:はい。
加藤諦三:よーく考えてください。
相談者:はい。
加藤諦三:尽くしたっていうのは、“反動形成”っていうんです。母親が子供に過保護になるのと同じなんですよ。憎しみの変装したものが過保護ですから。
相談者:あー、そうなんですね。
加藤諦三:うん。分かったね?
相談者:はい。
加藤諦三:これから74歳ですけど、長い人生です。本当に幸せになってください。
相談者:はい、分かりました。ありがとうございます。
加藤諦三:はい。どうも失礼します。
相談者:はい、ありがとうございました。
加藤諦三:『憎しみの変装した姿が過保護です』